この記事では「時計メーカーのキャッチコピー」について、書籍『誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ』よりご紹介します。

【書籍】『誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ
【著者】
Lionel Salem/森田正康/月谷真紀

パテック フィリップ
Patek Philippe

パテック フィリップは1851年、10年以上の懐中時計製作の経験があったポーランド人アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと、フランス人時計師アドリアン・フィリップによって設立された。フィリップは鍵巻き式に代わる竜頭による巻上げ・時刻合わせの機構を発明した人物で、2人は1844年のパリ万博で出会った。本社はジュネーブ。かつてオークションで最高値がついた時計は2 つともパテック フィリップ社製で、1つは1932年製の懐中時計「超複雑時計」(1999年12月にサザビーズ・ニューヨークにて1100万ドルで落札)、もう1つは1943年製「永久カレンダー付きクロノグラフ」で、2010年5月にクリスティーズ・ジュネーブで626万スイスフランで落札された(当時1ドル1.1スイスフラン)。

パテック フィリップのキャッチフレーズ「Begin your own tradition(引き継がれる伝統)」は1996年に広告代理店レガス・ディレイニーが考案した。「遺産」と「不朽性」を強調している。10分6秒のコマーシャル(2008年)が興味深い。裏に「A monfils(フランス語で「わが息子へ」)の文字が入ったパテック フィリップの腕時計「カラトラバ」をめぐる家族の遺産の物語だ。腕時計がパリのオークション会場ドルオ=モンテーニュで競売にかけられている。オークションの進行にともない、落札しようとしている男性から腕時計の物語が語られていく。腕時計は彼が20歳のときに父親から贈られた。後に彼はそれを売り払ってしまったらしい。「50歳を越えた今、私は若き日の過ちを償いたい」。かつての若者だったその男性は落札に成功し、腕時計を息子に譲ろうとしている。そして締めのナレーション。「こうしてパテック フィリップの物語は続いていきます。ジュネーブでは日々新たな一章が始まるのです……」。

最初、私はこのストーリーを遠い世界の話のように感じたが、思い返せば私自身も父から譲られたパテック フィリップの腕時計を家族ぐるみで親しい付き合いのあった友人に売ったことがあった。また、最近亡くなった私の弟が、50年近く前の誕生日に私が贈ったパテック フィリップの腕時計を私の長男に遺してくれていたことを知った(ただしどの世界でもそうだが、腕時計でも「最高の」時計という概念は永久不変というわけではない)。

ロレックス
Rolex

ロレックス社は1915年11月15日、以前から一緒に腕時計製作の仕事をしていた義理の兄弟同士のハンス・ウィルスドルフとアルフレッド・デイヴィスによって創設された。ロレックス(Rolex)の「ex」はフランス語の「exquise」(精巧さ)からとられているという。パテック フィリップ同様、ロレックス社も私企業で株式非公開である。有名なロレックスの腕時計には、世界初の気密、防塵、防水腕時計「オイスター」(1926年)、世界初の自動巻き腕時計「パーペチュアル」(1931年)、世界初の日付表示付き腕時計「デイトジャスト」(1945年)、そしてパンナム航空の要望で製作された世界で初めて2つのタイムゾーンを同時に表示する腕時計「GMTマスター」(1954年。24時間目盛り入り回転ベゼルとセカンドタイムゾーンの時刻を表示する専用の針がついている)がある。第二次世界大戦中、ウィルスドルフはドイツ軍の捕虜収容所に収容されていたイギリス人将校たちにロレックスの腕時計を提供し、その代金は戦後にようやく支払われている。ロレックスのロゴの黄金の王冠は早くも1925年に商標登録されたが、使用され始めたのは1939年になってからだった。ロレックスの社名は緑色の大文字で(背景が緑の場合は白で)書かれている。

ロレックスは多数のキャッチフレーズを掲げてきたが、ほとんどのロレックスのテレビコマーシャルはキャッチフレーズが登場しないまま終わる。例外は「A crown for every achievement(すべての偉業のための王冠)」(2002年)で、ロジャー・フェデラーを起用した複数の短いコマーシャルの最後に映し出される。2011年にロレックスは新しいキャッチフレーズ「Live for greatness(大志を抱いて生きる)」を発表した。2011年6月に新たに公開されたフェデラーが登場する30秒テレビコマーシャルは「大志が達成されるのはいつだろう?(中略)たぶんそれは、常に自分自身に『次は何を目指そうか』と問いかけるときではないだろうか」と語りかける。そしてコマーシャルの最後にキャッチフレーズが映し出される。

スウォッチ
Swatch

現在のスウォッチ・グループは1983年、経営不振にあえいでいたスイスの時計メーカー、ドイツ系のASUAG(Allgemeine Schweizerische Uhrenindustrie AG)とフランス系のスイスSSIH(Société Suisse pour l’Industrie Horlogère)が、ニコラス・ジョルジュ・ハイエクの主導で合併し誕生した。ハイエクは時計市場の低価格帯を狙ったクオーツ式のプラスチック製腕時計という戦略的コンセプトを打ち出し、そのコンセプトを実現した最初のスウォッチ(「セカンド・ウォッチ」の短縮形)が1983年に生産された。

ハイエクは1985年に同社の筆頭株主になり、1986年に同社の社名をSMH(Société Suisse de Microélectronique et d’Horlogerie)に変更。1998年、スウォッチに改名した。ハイエクは同社を全世界の時計生産の25%、売上の10%を占める時計メーカーに生まれ変わらせた功労者であり、「スイス時計産業の救世主」と称されている。その後自動車事業にも手を広げ、メルセデスと「スマート」を共同開発した。スウォッチ・グループの傘下にはブレゲ、ブランパン、オメガ、ロンジン、ティソなど有名ブランドが連なる。

スウォッチのキャッチフレーズは「Shake the world(世界を揺さぶれ)」で、自発性を強調している。2005年秋にロンドンの広告代理店ジョシュアG2によって発表された。最初に公開されたテレビコマーシャルの1つでは、人々がヨーロッパのある街でベンチの上、デスクの上、車の屋根、木の上などに直立の姿勢で立っている。「今だ」というナレーションの声とともに腕時計の針がある時刻を指すと、スウォッチのキャッチフレーズが一瞬現れ、全員が同時に飛び降りる。するとアジアの国々で自転車がいっせいによろめき、桜の花が散る。同時に飛び降りれば地球の裏側に衝撃を与えられる、という意味のコマーシャルだった。

イタリア人監督フランチェスコ・ネンチーニによる31秒のテレビコマーシャル「Breathe(呼吸)」(2007年)では、ソファの上で抱き合いながら男性が女性のドレスを脱がそうとしている。30秒経ってももたついていて、女性に愛想を尽かされてしまう。そこに現れるスウォッチのキャッチフレーズは「Time is what you make of it(その時間をどう過ごすかはあなた次第)」。

「スウォッチ」という言葉を考案した人物の名は謎のままだ。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

誰かに教えたくなる
世界一流企業のキャッチフレーズ


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