魅力的な商品やサービスを開発することができ、さらにそれを売る力があれば、それだけで年商五億円までは可能です。

しかし、それを越えて五十億円、百億円規模の売上を目指そうというならば、商品市場のことだけしか知らないというのは大きなハンディキャップになるといわざるを得ません

会社というのは、商品やサービスを売って利益を稼ぐ商品市場だけではなく、お金でお金を稼ぐ金融市場(マネーマーケット)を利用することもできます。そして、会社の規模を拡大するために、後者の有効活用は不可欠です。

そこでこの記事では、株式会社フロイデ会長兼シニアパートナー 坂本 桂一さんが著書『年商5億円の「壁」のやぶり方』で語られている、「2つの市場と株式会社の関係」をご紹介します。

坂本桂一

㈱フロイデ会長兼シニアパートナー、事業開発プロフェッショナル、山形大学客員教授。アドビシステムズ㈱(当時社名アルダス㈱)を設立しページメーカーをはじめて国内に独占契約で導入、日本のDTP市場をゼロから創造した。専門は、新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。㈱フロイデ

市場には商品と金融(マネー)の二つがある

商品市場と金融市場の関係を樹木にたとえるなら、花が咲き実がなる地表から上が商品市場、地下にある根の部分が金融市場と言えます(下図)。当たり前ですが、いくら枝を剪定し日当たりをよくしても、根に十分な水や肥料をあげないと木は大きく育たず、ちょっとしたことで枯れてしまうのです。

マネーマーケット

ところが、ベンチャー企業の創業社長で、このマネーマーケットのことを理解している人は、私の知るかぎりあまり多くはいません。

それまではそんなことを知らなくても、売上を伸ばすことだけを考えていれば会社はうまく回っていたので、仕方がないといえなくもありません。

それにしても、自分の会社を株式会社にしていながら、株式会社の社長と個人事業主の違いすら、きちんと説明できないのはどうかと思います

「株式会社だから信用できる」は幻想

自分の事業を株式会社にしても、その株式のほぼすべてを社長がもっているなら、その株式会社は個人事業とたいした差はありません。

厳密にいえば、欠損金が五年間繰り越せるなどの、主に税法上のメリットが株式会社にはあるものの、実質的には同じものだといってもいいのです。

そんなことはない、個人事業と比べたら株式会社のほうが対外的に信用がある。そう思っている人も多いようですが、それは都合のいい思い込みです。

たとえば、もし私が銀行の融資担当で、できたばかりの株式会社と個人商店のどちらに優先的に融資をするかと問われれば、それは間違いなく「信用のある」株式会社ではなく、個人商店の店主のほうだと答えます

理屈は明白です。

株式会社は有限責任、だから債権者に対して責任を負うのは会社の資産の範囲内になります。銀行から一千万円の融資を受けている会社が返済不能になった場合、資産が三百万円しかなければ、残りの七百万円に関しては、その会社から回収することができないので、貸し手としては不利なのです。

もちろん代表者である社長が債務の連帯保証人となっていれば、足りない分は「自然人」としての社長が返済の義務を負います。しかし、家屋敷を売り払ってでも会社の借金を全額支払えと社長に迫るというのは、法律の上では可能であっても、あまり世間体がよくないので、銀行としてはやりにくいものです。

ところが、借金をしたのが自分で商店を営むいわゆる個人事業主なら、これは普通の人が消費者金融でお金を借りたのと同じことですから、本人が自己破産でもしないかぎり、遠慮なく全額取り立てることができるじゃないですか。

こうやって比較すると、株式会社よりも個人商店の店主のほうが確実に回収できるわけですから、必然的に融資をするのは個人事業主ということになるのです。株式会社だから信用できるなどというのは幻想にすぎません

年商5億円の「壁」のやぶり方をもとに編集)

 

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